意識の底に押し込めた思い出さない方がいい記憶が蘇る。柴崎友香の新境地。 わたしは「恋愛小説家」と肩書きにあるのを見て、今のような小説をかくのをやめようと思った。恋愛というものにそんなに興味がなかったことに気づいたのだ。これからなにを書こうか。環境を変えるため、三年住んだ東京を離れ、中学時代に住んでいた区の隣り、かわうそ堀に引っ越した。そして、考えた末に怪談を書くことにした。そう決めたものの、わたしは幽霊は見えないし、怪奇現象に遭遇したこともない。取材が必要だ、と思い立ち、たまみに連絡をとった。中学時代の同級生・たまみは、人魂を見たことがあるらしいし、怖い体験をよく話していた。たまみに再会してから、わたしの日常が少しずつ、歪みはじめる。行方不明になった読みかけの本、暗闇から見つめる蜘蛛、こっちに向かってきているはずなのにいっこうに近くならない真っ黒な人影、留守番電話に残された声……。そして、たまみの紹介の商会で幽霊が出るとの噂がある、戦前から続く茶舗を訪れる。年季の入った店内で、熊に似た四代目店主に話を聞くと、絶対に開けてはいけないという茶筒、手形や顔が浮かぶ古い地図があるという。そして、わたしはある記憶を徐々に思い出し……。わたしの日常は、いつからこんなふうになっていたのだろう。別の世界の隙間に入り込んでしまったような。柴崎友香が、「誰かが不在の場所」を見つめつつ、怖いものを詰め込んだ怪談作品。 著者について ●柴崎友香:1973年大阪生まれ。99年短編「レッド、イエロー、オレンジ、オレンジ、ブルー」が文藝別冊に掲載されデビュー。2004年『きょうのできごと』が行定勲監督により映画化。06年『その街の今は』で第57回芸術選奨文部科学大臣新人賞、第23回織田作之助賞、2006年度第24回咲くやこの花賞を受賞。10年『寝ても覚めても』で第32回野間文芸新人賞。14年『春の庭』で第151回芥川賞を受賞。 ※2017年2月現在のものです |
この商品の説明
著者/アーティスト
著者: 柴崎友香
目次
窓;マイナス一;鈴木さん;台所の窓;まるい生物;文庫本;雪の朝;蜘蛛;雪の夜;電話;二階の部屋;ホテル;古戦場;足音;桜と宴;光;茶筒;ファミリーレストラン;三叉路;山道;影踏み;地図;観光;喫茶店;幽霊マンション;夢;宮竹さん;写真
商品仕様
- アイテム名:書籍
- ページ数:202p
- 大きさ:19cm(B6)
- 出版社:KADOKAWA
- ISBN-10:4041048311
- ISBN-13:9784041048313
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