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全国総合紙政治部記者の郷八馬とパートナーの茜は、ふとしたことから中央競馬の牡馬（男馬）競走馬「サムエルマーチ号」と出会う。以来、二人の身には、不思議な偶然と巡り合わせ、そして幸運が訪れる。同時に、競馬界の裏側でまかり通っている無情の現実にも直面する。シンザン、ハイセイコー、オグリキャップ、シンボリルドルフ、ミスターシービーｅｔｃ．…大舞台で活躍し、有史に残る名馬となってファンの心を熱くし、競馬界を盛り上げて来たスター馬たち。彼らの陰で、彼らを支え、競馬界を支え、日本の国家財政の一部を支えて来た脇役競走馬たちの数は１７７０万頭に上る。無情の人の、エゴイズムの生け贄となって、何も語らず「処分」されて行った、名脇役競走馬たちの命のことを八馬と茜は知る。そしてサムエルマーチも、その中の一頭であった。彼の死を知った八馬と茜は、その後、彼と同郷の後輩馬で、処分されようとしていたサラブレッド牡馬ヨシアズバローネを引き取り、馬産地北海道の牧場に預ける。以後、二人は縁あって出会った同様の状況にある馬たちを次々と家族として迎える。成り行き上、地方競馬の馬主資格を取るに至る二人だったが、その間、紆余曲折を経ながら、幸運にも、しっかりとした経済的裏付けを確保する。新聞社を退社し、編集プロダクションの会社を設立した二人は、「お馬さん好き」の新しい五人の仲間を得、彼らと共に、競馬界の中の生産界、馬主界、一口会員馬主クラブ（クラブ法人）界、調教師界、馬喰界、獣医界、乗馬クラブの各現場で、罪無き馬たちに平然と行われている現実を目の当たりにする。それは、更なる人の無情、無慈悲、無視―。その悲しみと怒りを５人の仲間たちと、家族の馬たちと、そして今は亡き１７７０万頭の競走馬たちの精霊と一緒に乗り越え、競馬サークルに猛省を促す改革案をもって、啓蒙活動の一歩を踏み出して行く。